一国一城の主になる日

ハローワークに通うことは考えなかった。公務員として20年働いてきたし、ある程度の人脈も作っていたから、そのツテでなんとかなると甘く考えていた。時代が時代だし、特別何かの資格を持っていなくとも職には就けるだろうと驕った考えを持っていたことも原因だろう。

 

公務員時代に築いた人脈を頼りに十数社面接に行ったが、ことごとく落とされた。共通して聞かれたのは「じゃあ何か資格をお持ちですか」だった。まるで申し合わせたかのような台詞。ようはつぶしが利かない職業で働いていた人間だから、何か特化したものを持っているのなら採用を考えようという腹づもりだったのだろう。

 

やはり50代という年齢がネックだったんだろうか。幸いにもパソコン操作はまったく苦ではないから、ネットで仕事を探してみた。正社員登用というものが少なく、あったとしても年齢制限があり応募すらできない案件が多いことに改めて気づかされた。

 

とりあえず、すぐに生活に困るということはなく、ある程度の貯蓄があるからアルバイトでもしながら…と考えたが、こちらもそう簡単に見つかりはしなかった。60代になった時に、と考えていたことを10年早く前倒し的にやろうかと考えて妻に相談した。うまくいけばいいのだが、失敗すると大金が飛ぶことになる。

 

何日も話し合い、結論を出した。すぐにネットからの情報でふたりして検討に検討を重ねてある一社に決めて面接に行った。コンビニ経営の心構えを伝え、フランチャイズ申請をして審査に通った。新しい生活がはじまると同時に、緊張からか手が震えていた。


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